原著作者リレーションシップ管理シナリオのベストプラクティス
この手順を使用すると、原著作者リレーションシップ管理シナリオの導入、およびこのシナリオに適したシステムランドスケープを構成することができます。ここで述べる書籍出版業者の一般的なビジネス要件に対応したシステムランドスケープの構成が記載された一連の文書は、Best Practices for the Author Relationship Management Scenario (原著作者リレーションシップ管理シナリオのベストプラクティス) というタイトルにまとめられています。追加要件がある場合は、それぞれの追加設定ステップが必要です。
ここでの記載に従ってシステムを設定すると、原著作者リレーションシップ管理シナリオを使用して新規のソリューションの評価、デモおよび導入を実行することができます。これらの文書には、ソリューション評価 (プロトタイプの作成) から導入までのプロジェクトプロセス全体が記載されています。
原著作者リレーションシップ管理シナリオのベストプラクティスを使用する場合は、以下のシステム前提条件に合致している必要があります。
● SAP CRM 5.0 サポートパッケージスタック 07
● SAP ECC 6.0 Plug-In 2005.1 および SAP ECC 業種別拡張 6.0、ERP 2005 サポートパッケージスタック 07
書籍出版業者が著作権管理システムとして知的財産管理 (IPM) を使用している場合は、一般的な要件に従っている必要があります。これらの要件は、書籍のタイトルに関する初期段階のアイデアから書籍の完成までに実行されるプロセスステップを基準としています。一般に書籍のタイトルは、ライセンサーが購買する作品を基準にします。このような作品は原稿と同様に、IPM の知的財産マスタデータオブジェクトを使用して処理されます。ライセンサーとの関係から多様なタイプのロイヤリティ契約が登録されます。一般に獲得契約は、出版権と呼ばれる作品の出版の権利、および他のマーケットに対して出版物として作品を販売する権利を扱います。この権利は付随的権利と呼ばれます。
ここで説明する Best Practice は、出版権のみを指しています。これは製品の販売にリンクし、ライセンサーとのライセンス使用の決済の基盤として使用されます。管理会計の要件は製品の販売に間接的に関連付けられます。書籍出版業者にとっての重要事項は購入した権利の使用です。ただし、一般に商業的成功の評価は出版された書籍が基準になります。したがって評価の際は、書籍プロジェクトの主題である、出版された書籍への関連付けを行う必要があります。
権利およびロイヤリティ決済プロセスは、出版業者のプロセスサイクル "コンセプトから製品まで" のプロセスサイクルに組み込まれています。権利獲得プロセスによって、いつ特定の権利を獲得するかが定義されます。このプロセスはライセンサーとの間の獲得契約によって完結し、この契約によって購入した使用権が規定されます。この権利獲得は、出版業者が製作した製品の出版権の使用、その後のライセンシーが獲得した権利の一部を販売することによる副次的な権利の使用などの後続プロセスの基準として使用されます。出版業者が製作した製品に対する出版業者の権利の使用に関連するプロセスでは、IPM 外の機能によって表現されます。これらのプロセスは製品の販売数がリンクを介して IPM に返され、出版業者の権利の決済のベースとして使用されます。
ロイヤリティ決済では、主要な機能として権利の使用に関してライセンサーに支払われる金額の計算が行われます。財務会計および管理会計の関連プロセスについては、財務会計 (SAP FI)、および管理会計 (SAP CO) の機能が使用されます。
ロイヤリティ決済の中核をなすものは、出版業者が製作および販売する製品です。製品は主として書籍です。ただし、CD ROM などの形態も使用することができます。ロイヤリティの計算時は多様な方法で製品の販売が監視されます。製品は以下のようなカテゴリに分類することができます。
● 原著作者が著作権を所有する原稿をベースとした製品
● 原著作者および原著作者グループがそれぞれ著作権を所有する複数の原稿をベースとした製品。このような製品は共同版権物またはアンソロジーと呼ばれます。
● シリーズ品
製品の販売は、販売管理 (SAP SD) を使用して処理されます。ERP システムでは製品が品目として登録されます。
Best Practice では、販売システムがすでに設定されていることを前提としています。ここでの設定の説明では、SD と IPM との統合に関する事項のみを扱っています。
出版業者は、IPM で処理される出版権および付随する権利をライセンサーから購入します。出版権によって、出版業者が使用する各言語による作品の出版および流通権が規定されます。技術的な理由により、出版権を照会するには、特定の製品と販売の組合せが特定のロイヤリティ契約によって処理されるように構造化する必要があります。通常、出版業者には独占的な出版権が許諾されます。
付随する権利には常に他のライセンシーに対するライセンスの割当が含まれます。通常、これらは包括的で、細目まで規定されます。たとえば、作品の脚色権や多言語への翻訳権などが規定されます。
このような権利の構造化には以下の条件を使用することができます。
国/言語 |
例: ドイツ語が使用される国 ドイツ、 英語が使用される国 (ニュージーランドを除く) |
権利タイプ |
例: 出版権、文庫本 |
権利の構造化の際は、常にロイヤリティ計算との関連があることを確認します。
一般に、ライセンサーとの間で締結されたロイヤリティ契約の権利の使用から得られた収益の割当には、受注タイプまた販売チャネルに関するロイヤリティ用許諾条件が必要です。特別な販売促進値引や販売促進部数に関する情報がここに転送されます。設定の説明では、ロイヤリティ料率が販売チャネルに依存することを前提としています (書店や業種固有の販売チャネルを使用した製品販売など)。
ライセンサーと出版業者間の販売関係は、多様なタイプの獲得契約を使用して表現できます。この契約タイプによって、各関係に特有の諸条件を表現することが可能です。契約では、獲得した権利の内容と有効範囲が規定され、使用可能な方法が定義されます。ロイヤリティに関しては、契約に複数の機能はありません。
● 原著作者契約では、ライセンサーの原著作者と出版業者との間の関係が示されます。ライセンサーは、原著作者契約における著作権所有者です。このため、原著作者がグループの場合は、各原著作者間のロイヤリティの配賦率を定義する必要があります。原著作者の代わりとなる著作権代理人が当事者である場合、支払先はこの代理人になります。ただし、ライセンサーが原著作者であることには変わりありません。
● 書籍に複数の寄稿があり、それぞれに固有の著作権がある場合は、寄稿者契約を締結します。一般に寄稿に対しては定額が支払われます。
● 書籍シリーズの契約関係でライセンサーが編集者である場合は編集者契約を使用してロイヤリティ計算を算入する必要があります。この場合、少なくとも編集者がシリーズの著作権所有者である必要がありますが、シリーズ内の各巻の著作権所有者である必要はありません。通常、編集者契約では同時に同一の著作権または原稿を参照する原著作者契約も発生します。
● 権利の獲得に関して外部の出版業者との契約関係も発生している場合は、権利獲得契約を使用します。この契約は、原著作者契約と同等です。
● 書籍プロジェクトのイラストレーションまたは翻訳の権利獲得にはイラストレータ、翻訳者契約を使用します。権利は、イラストレーションおよび翻訳にもリンクされています。
設定の説明ではここで紹介した契約カテゴリがトランザクションタイプによって示されます。最後に挙げた契約カテゴリの割当については、在庫/購買管理 (SAP MM) の購買機能とどちらの使用がより適しているかを比較判定する必要があります。
ロイヤリティは、定額支払として定義することができ、また、ワンタイム支払または分割支払で支払うことができます。
売上ロイヤリティは、価格に対する率、または販売される製品に対する固定価格として定義することができます。いずれの場合も、販売単位にしたがってロイヤリティを調整するスケールを定義することができます。
ライセンサーとの間で予測されるロイヤリティの前払が取り決められる場合も多くあります。これらは、ワンタイム支払または一部支払として定義されます。一部支払を定義すると、契約締結時、原稿提出時、および販売開始時を期日として使用することができます。前払は原著作者に対して返還要求されることはありません。このため一般に "ロイヤリティ最低保証額" と呼ばれます。売上ロイヤリティは、前払分が差し引かれます。このため、売上ロイヤリティが前金を超過するまで支払が行われません。
売上ロイヤリティの決済は定期的に行われます。たとえば、四半期、半年、年次の期間を契約によって採用することができます。
契約の規定によって、ロイヤリティの決済基準として以下のいずれを使用するかが定義されます。
間隔スケールとしてロイヤリティスケールが取り決められます。ロイヤリティ契約は、このスケールから生成されます。
書籍売上の正味収益を基準にして販売数量が 3000
までは 10%
の売上ロイヤリティで合意します。販売数量が 3001
を超えた分については 13%
の売上ロイヤリティで合意します。計算されたロイヤリティは、支払済の前払金が差し引かれます。
原著作者に納税義務がある場合は、ロイヤリティに仮払消費税が加算されます。この金額は別個の税勘定に転記され、税務当局によってチェックされます。
特定の支払先に対して、VAT なし、全額、または減税率適用の税債務額を定義することができます。税債務額は、販売する製品に依存する場合もあります。
税率は国ごとに異なります。
源泉所得税は、国外のビジネスパートナのみに関連します。ロイヤリティの正味額または総額を参照し、ドイツの統一税が含まれます。
源泉所得税は、IPM 請求伝票を財務会計の源泉徴収税と統合することによって導入されています。
前述のように、出版業者のプロセスサイクル "コンセプトから製品まで" のプロセスサイクルには権利の管理が組み込まれています。管理会計では、タイトル別収益性分析によって書籍プロジェクトの商業的成功が評価されます。権利獲得契約によって発生したロイヤリティコストはタイトル別収益性分析の負担コストとして関連付けられます。このため、タイトル別収益性分析は、出版者の権利の使用時に IPM と管理会計の統合に影響を及ぼします。
統合の際は、作品とタイトル間の関係を処理する IPM と ERP のマスタデータオブジェクト間の相互作用に特に注意が必要です。理論的には、任意の数のタイトル (品目) で特定の作品 (IP) を参照することができます。これによって、タイトルの販売から発生したロイヤリティコストをタイトル収益性分析に割り当てることが可能になります。原著作者との獲得契約は、プラント関連で定義され、ロイヤリティは IP に関連付けて算出されます。IPM ではロイヤリティコストをタイトル収益性分析のタイトルに割り当てる必要があります。これは、品目および利益センタに関する情報を製品の販売から IPM に転送し、ロイヤリティ計算の品目と利益センタ別にロイヤリティコストを配賦することによって実行されます。この結果が収益性分析に転送されます。
Best Practices for Author Relationship Management シナリオの設定の説明は、複数の文書に分かれています。これはタスクのグループごとにまとめられ、それぞれを以下の順序にしたがって処理する必要があります。
● 組織データの設定
● 製品の選定
● SD 統合の設定
● 決済の設定
● 会計管理との統合の定義